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分身ロボットカフェ DAWN ver.β
藤田美佳子さんにインタビュー

東京日本橋にある、「分身ロボットカフェDAWNver.β(ドーン バージョンベータ)」。ここでは、重度障害や様々な事情で外出が困難な人たちが、分身ロボット「Orihime(オリヒメ)」を遠隔操作し、自宅にいながら日本橋のカフェで働いている。今回は、オリヒメを通して働いているスタッフのひとり、藤田美佳子さんに話を伺った。

分身ロボットカフェでは、オリヒメを操作する「パイロット」と呼ばれるスタッフがいる。総勢約70名のパイロット達が、日々接客業務に励む。パイロットは日本のみならず、日本から海外へ移住し、そこから遠隔操作で働いている人もいるそうだ。
70名のパイロットが1時間交代で、インターネットにつないだオリヒメを通してカフェに来たお客様と会話し、オーダーを取ったり、テーブルまでドリンクを運んだりする。オリヒメは生身の人が操作するので、ときにはお客様のテーブルを間違えてしまうような、ちょっとしたハプニングもある。それも「人の分身」であるオリヒメならではの“人間らしさ”を感じられる魅力のひとつだろう。

藤田さんはそんなオリヒメのなかでも、お客様の好みを聞いてコーヒーを淹れる「バリスタロボット」の操作もしている。
もともとカフェでバリスタとして働いていた藤田さんは、2017年にALS(筋萎縮性側索硬化症)の確定診断を受けた。徐々に身体が動かなくなっていくなか、カフェの仕事も半ばあきらめざるを得なくなっていた。
「家族に手助けしてもらうことも増え、『ありがとう』『ごめんね』ばかりの生活のなか、人に何かをしてあげられる喜びも幸せのひとつかなと思い、まず仕事をしたいと思いました」

自宅でできる仕事を探していたころ、分身ロボットカフェオリヒメのパイロットを募集していることをSNSで知ったという。「これは!」と思った藤田さんは、すぐに応募。最初は試験的で期間限定だった店舗も、2021年6月に、東京日本橋に常設展示店としてオープン。今年で3年目を迎えている。
現在は、体調に考慮しながら、週に3~5日、1日に1、2時間の勤務をしている藤田さん。ロボットが一緒に働くカフェならではの、お客様との出会いもあるという。
「普通のカフェだと、コーヒーを求めてカフェに行くかたが多いと思うんです。でも、ロボットが好きでカフェにいらっしゃるかたもいて、そのかたたちのなかには、初めてコーヒーを飲まれるかたもいます。そういうふうに、分身ロボットカフェが『誰かの初めての場所になる』ことも、とっても面白いなあと思います」

自身の性格を「おっとりしていて、どちらかというとどんくさいタイプ」だと話す藤田さんだが、やってみたいと感じたことがあったらすぐ行動するほうで、一時期はウェイクボード(※ボードに乗った状態で、水上バイクやモーターボートにつながったハンドル付きのロープにつかまり、引っ張られることで水上を滑るスポーツ)に夢中になったこともある。船を下ろすタイミングに合わせて、毎週朝6時に波に乗りに行っていた時期もあったそうだ。

Web取材の画面越しには、クマや花を描いたふんわりとした雰囲気の絵が飾ってあった。手を動かしづらくなってから、アプリを使って藤田さんが描いたものだそうだ。藤田さんは、保育士のアシスタントとして、親子教室で工作などを手伝っていたこともあった。
「今まで手を動かして描いていたのに、それができなくなってしまったことにはすごく落ち込みました。でも、アプリを使って描く方法があることを知って、『なんだ、できるじゃん!』と、そこからまたひとつ夢が広がりました。今までできていたことができなくなる身体に対して別の方法を探し、挑戦につながっていくこともあるので、それをきっかけとして次にやりたいことが見つかる場合もあります」

最後に藤田さんはこう語ってくれた。
「昨日動いていたのに来月には動かなくなるかもしれないという身体と向き合うなかで、やりたいこと、変わらなく続けていきたいことは日々変わります。『諦めなくていいんだ』という気持ちをもち続け、できなかったことがクリアできると大きな喜びに繋がります。夢はかさばらないので、たくさん持っていようと思います」

進行性の病気は、マイナス面にばかり目を向けられがちだ。しかし、できなくなったことに対して、できるようにする手段を発見していくこと自体を「夢」ととらえれば、そこにプラスの部分を見出すこともできる。藤田さんがチャレンジ精神と勇気をもって生きていく姿は、これからもきっと、ほかの誰かに対しても「夢」を見つけるきっかけを与えてくれるだろう。

インタビュー 小林 景子

岡崎盲学校高等部理療科のみなさんの学校紹介

盲学校でのスキル獲得が障害者の自立を支える

障害者が社会進出をする上で、就労の場を増やすだけでなく、彼らが必要なスキルを獲得することも実はとても重要です。私自身も身体障害者であり、スキル獲得が自立への道を拓く重要性を痛感しています。障害によって制約があるからこそ、自分の能力を最大限に発揮するために必要なスキルを身につけることは欠かせません。
今回は身体障害者の筆者ではありますが、視覚障害にフォーカスし、とある盲学校の教育課程や学生の生の声に注目してみました。

▼岡崎盲学校高等部理療科:自立を支えるスキルを学ぶ
今回ご紹介する岡崎盲学校高等部理療科には、2つの教育課程があり、保健理療科では、高等学校普通教育とあん摩マッサージ指圧に関する専門教育を行い、専攻科理療科では、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうに関する専門教育を行います。それぞれ3年間の課程を修了すると、国家試験の受験資格を得ることができます。国家試験に合格した卒業生は、治療院や病院で働くか、自宅などで開業することができます。岡崎盲学校では実践的な技術の習得と就職に向けた準備を重視しています。

▼学生の声:自身の学びと将来の意欲
岡崎盲学校高等部理療科1年の学生にインタビューを行い、彼らの学びや学校生活についての意見を聞きました。

廣瀨亘さんは、以前は会社で働いていましたが、緑内障の進行により社会貢献を継続することが難しくなり、視力の低下にもかかわらず何か役に立つことがしたいと思い、岡崎盲学校に入学しました。彼は授業の音声を録音し、自宅で整理して学習しています。また、フロアバレーボールの部活に参加し、全国大会を目指して練習に励んでいます。彼は毎日の給食も楽しみにしており、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格取得を目指し、医療や健康分野で社会貢献したいという意欲を持っています。

山口秀樹さんは、緑内障による視野狭窄の進行により、前職を続けることが難しくなりました。盲学校に入学し、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの資格を取得することを目指しています。彼は学校生活や部活動を楽しんでおり、同じ障害を持つ人々との交流を大切にしています。将来はあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格を取得し、視覚障害があっても治療を提供できる職業に就きたいと考えています。

渡辺加奈子さんは、学校見学で充実したサポート体制や先生との良好な関係性を目にし、岡崎盲学校で3年間を過ごすことを決意しました。彼女は一人一人の見え方に合わせて配慮された環境で勉強ができ、実技科目でも丁寧な指導を受けています。彼女は学校で学んだことや臨床実習での実践経験を就職先で活かしたいと思っており、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の3つの資格を目指して、医療施設や治療院での就職を希望しています。

また、S・HさんとU・Sさんも岡崎盲学校で学んでいます。S・Hさんは視力が弱くなったことをきっかけに入学し、ゆったりとした雰囲気の中で学んでいます。U・Sさんは学校の授業を普通に受けながら、あん摩マッサージ指圧師を目指して頑張っています。

▼学校の特徴:個別のニーズに合わせた教育と交流の機会
岡崎盲学校高等部理療科では、個別のニーズに合わせた教育や交流の機会が提供され、学生たちは充実した学びを得ています。
また、学習だけではなく、岡崎盲学校という場所が彼らにとって仲間作りの場でもあることを感じました。彼らは同じような境遇を持つ仲間と交流し、支え合いながら学校生活を送っています。部活動や学校のイベントに参加することで、友情を育み、心の豊かさを共有できるのです。

視覚障害者が自立し、社会で活躍するためのスキルを獲得することは決して容易なことではありませんが、これからも岡崎盲学校は、障害者の自立支援に向けてさまざまな取り組みを進めていくことでしょう。
彼らの頑張りと成果に期待を寄せながら、彼らの未来がさらに輝くことを願っています。

インタビュー 佐藤 仙務