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日本ガイシ株式会社の鈴木豪さんにインタビュー

日本ガイシ株式会社で働いている鈴木豪(すずきごう)さんにインタビューをした。鈴木さんは生まれつき聴覚障がいがある。
普段は手話や口話や筆談でコミュニケーションを取りながら生活し、現在の会社に入社して五年。仕事内容は、自動車の排ガス浄化装置の一つであるNOxセンサの検査作業。二交代制で一週間ごとに昼勤と夜勤の入れ替えての勤務だ。

■明るくアクティブ
「趣味は、旅行です。電車に乗ることや自然鑑賞も好きで、和太鼓を習っています。最近はトレイルランニング、山登りに挑戦し、夢は一人でヨーロッパ旅行をすることです」
とてもアクティブで圧倒された。その中で筆者が特に気になったのは、聴覚に障がいがある彼が、どのように和太鼓を演奏しているのかだった。
「周りの皆さんと動きを合わせて、振動を感じながらやっているんです」
しかし、タイミングがずれてしまうこともある。難しいながらも挑む鈴木さん。その難しいことに挑戦することを楽しんでいるように見えた。
今までで印象に残っている旅行先は台湾。翻訳ソフトを使うと、世界中の人と話すことができ、言語とコミュニケーションの壁はあまり感じないそうだ。
幼い頃から明るい性格で、前向きに前進してきたが、コミュニケーションが取れず辛いこともあった。そんなときは周りにいる人に声を進んでかけて、相談するのが大事と語る。
就職する時期になり、自分にできることはなんだろうと悩んだ。聴覚障がいの友人が働いていて、話を聞くうちに自分もこの企業で働いてみたいと思ったのが『日本ガイシ株式会社』だった。面接では一緒に働く人に理解してもらえるよう、自分の体のことを素直に包み隠さず伝えた。

■コミュニケーションが大事
念願叶って入社できた鈴木さん。ところが、実際に働いてみると、聴覚に障がいがある鈴木さんは、専門用語などもあり理解に時間がかかることもあった。唇の動きを読み取って理解し、それでもわからないときには紙に書いてもらって学んでいく。先輩や上司は、嫌な顔をしないで丁寧に教えてくれた。鈴木さんも早く戦力になりたいと集中して覚えることに専念。今では自分の仕事にプライドを持ちながら、丁寧に業務をこなしている。
鈴木さんの担当する業務は検査の最終工程。
「不良品がお客様の手元にいかないように、そして会社の信頼を落とさないようにと、つねに注意を払っています」
現在はコロナのせいでマスクをしているため、唇の動きが読みにくく、表情がわかりにくい。職場でどうしても必要な場合は、マスクを一度外してもらって話を聞くこともあるそうだ。
鈴木さんはコミュニケーションを取ることをとても大切にしている。コロナの状況にもよるが、仕事終わりには職場の飲み会に参加して、同僚や上司と楽しく過ごす。
休日は趣味を大切にしていて、なるべく出かけて心のリフレッシュをして、英気を養う。

■この先目指していること
「業務中の気付きから改善方法を常に考え行動し、誰もが安全でやる気のある職場を目指したいです。自分を多能工化し、多くの作業で人に教育できるレベルを目指しています。自分の長所である元気と明るさを生かして、皆が元気で明るく働ける職場作りに取り組んでいきたいです」と熱い思いを語ってくれた。
「障がいがあってもできないと考えないで、できるようになるために諦めないことが大切」と企業就職を目指している障がいがある方へ力強いメッセージ。
鈴木さんの持ち前の明るさが、人生を強く生き抜く秘訣なのではないかと取材していて感じた。上司から言われて嬉しかった言葉は「いつも明るく挨拶をしているね」だ。取材中もずっと爽やかな笑顔で答えてくれたのが印象的だった。

インタビュー 佐々木美紅

立位テニスプレイヤー 大脇佳奈さんにインタビュー

「山田コーチに言われたことが理解できなかったり練習内容に身体が付いていけず、くじけそうになることもたくさんありますが、いつかは立位テニスをする人が増えて、環境が整っていくことを切に願い頑張っています」
そう話してくれたのは、愛知県在住の大脇佳奈(おおわきかな)さん。フジ建設株式会社で仕事をしながら、週二回、山田コーチとのプライベートレッスンに励んでいる。大脇さんは、先天性二分脊椎症という障がいがあり、普段は独歩で歩くことはできるが、長距離になると車いすを使用することもあるそうだ。今回は、レッスン後のコートからインタビューに答えてくれた。
立位テニスは知らない方も多いかもしれない。障がいの度合いによってカテゴリー分けをし、立ったままテニスができるというパラスポーツだ。
車いすテニスといえば、パラリンピックの正式種目となっており知っている人も多いだろう。しかし、車いすのままだとプレーができなかったり、やりにくかったりする障がい者もいる。例えば上半身不随の場合、車いすを操作しながらラケットを持ってプレーするのは難しい。また、車いすを必要としない義足の選手などもいる。
大脇さんは、立位テニスを始める前は車いすテニスをしていたが、足の筋力低下があり立位での練習を取り入れた。さらに新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発出され、テニスコートでの練習ができず、足の筋力がだんだんと落ち歩けなくなり、このまま車いす生活になってしまうことが不安に思っていたところ、インターネットでたまたま立位テニスの存在を知る。そして本格的に立位テニスをやろうと決意。ところが愛知県内には、立位テニスの競技者はおらず、練習は山田コーチとしかできない状態。

普段はどのように練習されているのか、山田コーチに話を聞くことができた。「大脇さんのカテゴリーの場合、相手選手もあまり走ることができないので、その動きの速度に私が合わせて歩きながらボールを打っていき、大脇さんが打ったボールに相手がどこまで届くのか探りながら練習をしています。また、自分が打てる範囲に飛んできたボールを確実に打ち返せるようなラケットさばきと相手がどこに打ってくるかを予測することが重要になってくるのです」
立位テニスをする上で大変なことは、コート作り。立位テニスは、障がいの度合いによってカテゴリー分けをしており、テニスコートの面積や使用するボールが違う。大脇さんのカテゴリーはB1。世界基準のカテゴリー分けを元に、日本選手の現状に合わせて設定されている。コートを借りて練習をするため、レッスン前にコートサイズを測ってマーカーを使って目印をつけてからレッスンのスタートだ。大会は、関西や関東のみで行われているため遠征資金での苦労も多い。立位テニス人口が増加して、愛知県近郊や地元で試合ができたり、一緒に練習する仲間が欲しい。と発言されたのを聞いて、まだまだ認知してもらう必要があるスポーツだと思った。
大変なこともあるが、立位テニスの魅力も語ってくれた。
「自分の体の動く部分の機能を使って、テニスができるんです。車いすテニスだとチェアワークが難しくて……。立位テニスだと、ワンバウンドで相手に返球しないといけないですが、弾まないオレンジボールを使用してコートサイズも小さいので私の場合は、車いすテニスよりもポールが飛んでくる場所まで行く事ができボールに追い付く事ができてそして、普段の立った状態で競技ができる事が嬉しいです。」
昨年、10月に千葉県成田市で開催された第2回全日本障がい者立位テニス選手権大会では初挑戦ながら見事カテゴリーB1準優勝。
「コロナ禍ではありましたが大会に参加して、初めて同じカテゴリーの選手と対戦できて今後の課題がたくさん見つかり次回の大会に向けて練習方法も分かったり、他県の選手とも交流できたことがとても嬉しかったです」と笑顔。
休日は、愛知県障害者スポーツ指導者協議会(名称のまま『害』を漢字で表記)での活動にも参加している。
パラスポーツで立位がないテニス競技。車いすに乗ってプレーすることだけが、パラアスリートにとっての道ではない。様々な障がいにも対応できるスポーツとなることで、もっとテニスを楽しめる人が増えるだろう。
大脇さんがこの先、目指していることは、11月13日(日)に千葉県千葉市で開催される第2回障がい者立位テニス東日本大会カテゴリーB1クラスで絶対優勝すること。アスリートとして努力している姿は清々しく、心から応援していきたいと思った。

インタビュー 佐々木美紅