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株式会社まんまる笑店
代表取締役社長 恩田聖敬さんにインタビュー
新卒入社した上場企業で、現場叩き上げ5年で取締役に就任。
2014年4月FC岐阜の社長にJリーグ史上最年少の35歳(当時)で就任。就任と同時期にALS(筋萎縮性側索硬化症)発症。病状が進行し職務遂行困難となり、やむなく社長を辞任。
ブログ開設。会社設立。出版。講演、研修を全国で開催。
24時間完全他人介護で妻、娘、息子と生活。
様々な活動と経験をされている今回の登場者は、株式会社まんまる笑店 代表取締役社長恩田聖敬(おんださとし)さん。『日本一マルチな障がい者。障がい者の可能性を自ら示して、障がい者と健常者の垣根をなくしたい』と書いてくれた恩田さんへ障がい者当事者ライターが質問をした。
1、恩田さんにとって自分らしさとは?
社会一般の価値観に縛られず、好きなことややりたいことをして生きることでしょうか。
2、今の身体の状態を詳しく教えてください。コミュニケーションはどのようにとっていますか?文章はどのように書いていますか?
口文字→ https://youtu.be/6aV5cov2_fs
iPad→ https://youtu.be/IsWGawyDcQ0
スイッチングを咀嚼筋でやってます。iPadのスイッチコントロール機能とチューブを口に咥えて圧力センサーと繋ぎチューブを噛むとチューブ内の圧の変化を感知して、それがスイッチングになります。4年前からこの方法です。
3、病気を発症したときの感情を教えてください。またその感情を乗り越えて、起業されておりますが、乗り越えるためのエネルギーはどこから出てきたのでしょうか?
以外とすんなり受け入れています。やはり家族の存在が大きいです。病気でも家族を守る責務は自分にあると思ってます。昭和男です(笑)
4、私も車椅子で夫と暮らしていますが、いまだに家族から介護してもらえないのですかと聞かれることがあります。介護するために結婚したのではないと思い辛いです。
もっと『完全他人介護』を世の中の人に理解してもらうためには、何をしていったらいいと思いますか?
言ってる人は想像出来ないのです。自治体の障がい福祉課には是非フルタイムで働いた後に介護や家事や育児を全てやる体験をして欲しいです。それでも家族介護と言えますか?という話です。家族の愛情と介護するのは全く別問題です。
5、恩田さんは、前向きに見えます。元々前向きなんですか?それとも、変わっていったのですか?
おそらく元々ですが、周りが評価したのは高校からだと思います。
6、仕事をする上で大切なことを教えていただきたいです。
プロとして恥ずかしい仕事はしない、お客様に満足頂いて何か気づきを提供すること。
7、お子さんやご家族と過ごしたことで、心に残っていることを教えてください。
ALSになる前の家族4人だけの旅行がすごく幸せでした。ALSが治らない限り必ずヘルパーさんを伴います。もちろんヘルパーさんには感謝していますが家族のプライベートな時間が愛しいです。
8、自分を理解してもらうために工夫していることはありますか?
発信し続けること、学び続けること、色々な境遇の方を知ること。
9、「障がい者と健常者の垣根をなくしたい」とのこと。今感じている垣根を具体的に教えてください。
健常者の世界には障がい者は存在しません。そして私のようにある日突然障がい当事者になって障がい者の世界を知る。だから自分自身が垣根を越えた存在になる。そして我々の存在と窮状を知ってもらう。
10、チャレンジする時失敗を恐れないのですか? またこれから障害があっても何か頑張りたいと思っている方にメッセージをお願いいたします。
失敗とはこの方法ではダメだとわかったということに過ぎず別の方法を考えれば良いだけです。この世に一度も失敗しない人など居ません。障害の有無ではなく自分が本気になれるものにめぐりあえるか。また生きるだけで充分頑張っている方も居ます。そんな方は存在が周りに勇気を与えます。みなさん胸を張ってください。
今回は文章だけのやり取りだったが生きる力が伝わってきた。これからも恩田さんの活動を通して、たくさんの方が勇気をもらえるだろう。
インタビュー 佐々木美紅
〜ボッチャに夢を乗せて〜
日本福祉大学社会福祉学部人間専修1年の、黒木幸雄さんにインタビュー
【ボッチャを始めてから多くの人と出会い、様々な経験をして世界観が広がった】
と語るのは、黒木幸雄さん(19)。
黒木さんは、障害者手帳の等級的には、1種1級の身体障害がある。
中学3年の時に、友人に誘われ出場した、「全国ボッチャ選抜甲子園」でボッチャに目覚める。
その、全国ボッチャ選抜甲子園では、夏休み毎日必死に練習したにも関わらず、残念ながら一度も勝つことができず、とても悔しい思いをした。
かえってそれが、黒木さんを「本気でボッチャをやりたい!」という気持ちにさせたのだ。
今まで特別支援学校という環境で、関わるメンバーも少ない中、ボッチャの合宿で、同じ何かを目指す仲間ができた。
コロナで海外遠征まではできなかったけど、海外遠征することを想定して、飛行機に乗るまでの工程などを調べたりした。
普段そういうことはしないので、とても良い経験になった、と黒木さん。
このような経験や知識は、黒木さんの今後の人生に役に立つことだろう。
【日本を代表する選手たちとの練習】
愛知県には、東京パラリンピックで銀メダルを獲った河本圭亮選手や、臨機応変なボール戦略を武器に持つ 江崎駿選手ら、日本を代表する選手たちがいる。
彼らはまとっている空気感も違って特別感がある。
彼らとの練習試合は緊張するが、学べることもたくさんあるという黒木さん。
日本を代表する選手を目指す黒木さんにとって、彼らとの練習試合は、良い刺激になっているのだろう。
【1人で練習する時は、ボールの距離合わせを中心に】
黒木さんは、ボールを手で投げることが難しいため、ランプといって、滑り台のように勾配がついた道具を使って投球を行う。
ランプに1cm間隔で目盛りが付けてあって、ここの目盛りの高さまで持ってこれば、ボールが何メートル行くっていうのを事前に記録しておく。
当日は誤差が出るので、その誤差を埋めるために記録を取ったりして練習しているという黒木さん。
聞いてるだけで、とても細かい作業だということが分かる。
【ボッチャの楽しさは、最後の最後まで何が起こるか分からないところ。相手との駆け引きも楽しい】
どんな駆け引きをする?
ボッチャは一般的には、ピッタリとボールをつけるショットが良いショットと言われているが、ボールとボールをわざと離してみる。
相手のコース上には被るけど、離れたところに置いといて、相手に横から入れさせて、後で押せるようにしたり。
また、普段は弾いたほうがいい場面で、わざと寄せにいって相手の出方を見たりとか。
駆け引き&駆け引き。
まさに頭脳プレイである。
【苦労していること】
ランプで距離の精度、ボールが真っ直ぐ転がるかを調整するのがとても大変。
気温や湿度も関係してくるため、乾燥しているとボールは軽やかに転がったり、湿度があると滑りにくかったりするそうだ。
また、会場の床の質や、板目の向きによっても変化するため、そこを調整するのが課題となっているという。
このようなことからも、ボッチャはとても繊細なスポーツだということが言える。
【パラスポサークル ROAIS】
黒木さんが立ち上げた、パラスポーツのサークル「ROAIS(ロアイス)」は、パラリンピックスポーツを中心とした障害者スポーツの体験・理解・発信をしていくサークルだ。
まだ立ち上げたばかりなので、今はボッチャをやりながら、サークルの方向性を決めていきたいと黒木さんは話す。
【休日の過ごし方】
黒木さんは2時間弱かけて大学に通学していて、行き帰りで時間を取られるため、休日はもっぱら、課題に追われていることが多い。
また、ROAISとは別に、もう一つサークルに入っており、そちらでは障害当事者の方々と学生が交流したり、どこかへ出かけたりして活動している。
そして、平日にはなかなかできないボッチャの練習を、休日にやったりもしているそうだ。
【大学を卒業するまでに、社会福祉士の取得をしたい!】
社会福祉士になって、障害者の社会参加の促進を図れるような活動をしていきたいという黒木さん。
障害のある方が、社会の中でどうあったら良いと思いますか?
どうあるのが理想でしょうか?の問いに、
障害があるとどうしても、身体的な面や設備面で、選択肢が限られてしまう。
でも、やりたいことをやれるようにしたくて、今ならオンラインという方法もあるし、工夫次第でどうにかなることってたくさんあるんじゃないかな?と思っていて、そういった選択肢を増やして、障害者が社会に参加できるように、お手伝いというか、繋ぎ役ができたらいいなと話してくれた。
【まずは来年1月の、日本選手権本戦の決勝トーナメント進出が目標!】
来年1月というと、あともう半年もない。
今のコンディションは?と聞くと、
「来年1月からの日本選手権から、ボッチャの規定が変わり、ボールも公認マークという認証がないとダメで、それに向けてボールを全て買い替えた。
今までのが使えない。どうしよう?ってことで、今、色々と調整しながらやってます。これからは、数をこなしていくしかないので、頑張ります」
そう、真剣な眼差しで語ってくれた黒木さんは、切れ長の瞳が印象的だ。
彼は、パラリンピックのボッチャで、金メダルを獲れるような選手を目指している。
パラリンピックで、その勇姿をテレビで観られる日が来るのかも知れない。
エネルギッシュに輝く若い彼を、心から応援したい。
インタビュー 前田真規