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システムエンジニアとして働く大島松樹さんにインタビュー

 大島松樹さんは、システムエンジニアとして就労する傍ら、愛知県筋ジストロフィー協会会長をされている。自身も進行性筋ジストロフィー肢帯型を患う中、日々の活動に力を入れ奮闘中だ。

「診断された時は医者から『あと4、5年で車椅子ですね』と言われたのですが、還暦過ぎてもまだ歩けているなんちゃって筋ジス患者です」と笑顔で自己紹介してくれた。

15歳の時に手が上がらないことがきっかけで通院すると、多発性筋炎という病名がつけられた。当時は筋ジストロフィーの検査の技術が発達していなく正しい診断ができなかった。その後、普通に生活をして社会人となり、システムエンジニアとして働くようになった。足がだんだん細くなっていき不思議に思った大島さんは、大学病院を受診。そこで進行性筋ジストロフィー肢帯型と診断された。「予後に影響はなく人並みに寿命を全うできると知り、病名もわかったので安心しました」

身体障害者手帳を取得後、会社に伝えて障害者枠として働くようになったが、今までと変わらず就労することができた。自転車にも乗れ、運転もできるが、在宅勤務が増えてから筋力が衰えてきたこともあり、歩く時には下を見てつまずかないように気をつけている。そして4ヶ月に1週間ほどの期間で新潟までリハビリにも通っているそうだ。

仕事とリハビリと毎日忙しい日々を送っているが、8年ほど前に愛知県筋ジストロフィー協会会長に就任。生まれて半年から80代くらいまで、120人ほどのメンバーが所属しており、月に一度ほど、訓練指導、バーベキュー、療育キャンプなど行っている。コロナ禍の時もリモートでつないでゲームやカラオケ、ものづくり教室など、喜んでもらえるように工夫して運営を続けた。そして会員からの相談の電話にも対応。「なかなか難しいですが、傾聴が大切なんですよね。子供が発症して不安になっている親御さんに自分ができるアドバイスをさせてもらっています」

病のせいで若くして亡くなってしまうメンバーもいた。辛く悲しい思いもするが、協会のみなさんに充実した時間を過ごしてもらうため、事務局の仲間と一緒に計画を立てている。

そんな大島さんは、うどんに情熱を注ぐ。病名が判明しそうな頃、たまたまテレビで見て美味しそうだと思ったことがキッカケだった。実際に香川まで足を運び食べると感動。それから毎月のように行くように。作り方を教えてもらい、たまたま知り合った香川出身の人にうどんを食べてもらうと「本場の味と変わらない」と言ってもらえるまでに。同じ病気の仲間や時には全国各地に出向いてうどんを振舞っている。

好きなことに打ち込みストレス発散をしながら、仲間のためにも動いている日々。そんなアクティブな彼の目標を聞かせてもらった。

「まずは健康に気をつけて、筋力が低下していかないように自分も体を動かして外に出ていきたいと思っています。そして協会のみなさんが笑顔になれるように頑張っていきたいです」

そして最後にシステムエンジニアとして、これから就業をしようと思っている未来の後輩たちのために言葉をもらった。

「体が動かなくてもパソコンがあれば仕事はいくらでもあります。世界とつながれる時代です。だから諦めないでほしいと思います。自分で働いてお金が入ってきたら好きなことができて、また世界が広がっていきますから。システムエンジニアやプログラマーは指先が動けばできる仕事です」

努力次第で自分の人生を明るく楽しい方向に変えていけるという希望がもらえるインタビューだった。

インタビュー 佐々木美紅

ZUCCHINI(ズッキーニ)の活動紹介!

ZUCCHINI(ズッキーニ)では、チャレンジド(ハンディキャップのある人たち)が描いた絵を、メッセージカードやTシャツなどに商品化し、販売するなどの活動をしている。ズッキーニの活動を支援する三村祐美さんに、活動内容や支援するうえでの思い、今後の活動予定について伺った。

ZUCCHINIのインスタグラムには、ユニークないきものや模様、イラストがデザインされたTシャツやメッセージカードなどが並ぶ。ZUCCHINIのメンバーは現在7人。立ち上げたきっかけは、メンバーのうちの1人であるフウゴさんの絵に三村さんが出会ったことだ。

「展示されていた原画がすごくかわいかったので、メッセージを入れたポストカードにしてフウゴくんのお母さんにプレゼントしたら、とても喜んでくださいました」 3〜4か月に一度、フウゴさんのお母さんが主催する「おもやいマルシェ」が、同じくメンバーであるソラさんのお母さんが運営している「アトリエあおぞら」で開催される。そこでポストカードを販売してみると、あっという間に完売したそうだ。
見てもらう機会がないままでいるほかの素敵な作品も、いろいろな人たちの目に触れるきっかけをつくりたいと思った三村さん。商品化するうえで名前があるほうがいいと考え、ZUCCHINIという名前をつけて活動をスタートさせたそうだ。なお、利益の一部は作者に還元している。

おもやいマルシェでは、商品の販売はもちろん、作家であるメンバーの方たちも手伝いに加わる。あかちゃんや高齢者、障がいのある人もない人もみんなが楽しめる場所で、お母さん同士の再会・交流の場にもなっている。マルシェの開催時間は10時から14時までの4時間ほどだが、来客は100人を超える賑わいを見せる。回を重ねるたびに、マルシェの盛り上がりはさらに大きくなっているようだ。

ZUCCHINIのメンバー7人はそれぞれ、造形教室や自宅で絵を描いているが、ときにはみんなで集まって描くこともあるそうだ。
メンバーにはそれぞれこだわりがある。ひとつひとつ色を選びながら時間をかけて絵を描く方、写真の特徴をとらえて線画で表現するのが得意な方、電卓で数字を打ちながら、その数字を書き出していく方もいたりする。
「字を書くことが好きみたいで、計算機を横に置いてなにかの計算をしながらそれをずっと書いているんですね。私たちにはよくわからないけど、『頭の中にはなにがあるのかな?』って見てみたくなるぐらい。たまに同じ数字が何度も出てきたり、きれいに並んだ数字は遠目で見ると模様に見えたり、いろんな発見や見方ができるところも面白いなと思います」

絵を描く現場では、疲れたらひと休みしたり、没頭したら3時間ぐらいは描きっぱなしの場合もあったりするなど、それぞれのペースに合わせた自由な空気がある。「使う色や画材も自由で、こちらから
題材を提案することもあれば、思いのままに絵にしていく方もいたり。その空間はいろんな刺激があって、みんながお互いに高めあうような感じがありながら楽しそうな雰囲気で、それを見ているのも楽しいです」と三村さんは言う。

活動するなかで三村さんが大切にしていることは、何より「みんなが自由で楽しい」ことだ。また、作品を商品にする際は、色にこだわって描いた作品はできるだけ同じ色で再現するようにしたり、筆の動きや絵の具の混ざり具合に味がある作品は、それが活きる使い方をしたりする。動物などの表情がある作品には、その表情から伝わる思いを探って三村さんがメッセージを添えているものもある。

この先目指していることについて「いつか原画の展示と商品の販売、作者にも会える『ZUCCHINI展』を開催したい」と三村さんは語る。 
「たくさんの方にみんなの絵を見てもらいたいという気持ちもありますが、絵を見た方から『素敵だね』と声をかけてもらえると、みんな本当に嬉しそうなので、そんな機会を作っていけたらいいなと思います」

なお、おもやいマルシェは11月5日(日)に開催予定だ。ワクワクするようなマルシェの雰囲気を味わいに、そしてZUCCHINIの作品と作家さんたちに会いに訪れてみてはいかがだろうか。

インタビュー 小林 景子