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インフルエンサー 山﨑真斗さんにインタビュー

『インフルエンサー、まなと』こと山﨑真斗さん。彼の話を聞いていると『障がいがあるとかないとか関係ない。もっと大切なことがある』と思わせてくれる。
彼は脊髄性筋萎縮症のため電動車椅子で生活をし、日常生活に誰かの介助が必要だ。
動く指先でパソコンやスマホを操作し、障がい者の偏見をなくしたいという強い思いからSNS活動を開始。そしてリスクもあったが実家を出て一人暮らしを始めた。一歳の頃に障がいがあることがわかった。幼稚園では障がいがない子たちと一緒に過ごし、小学校から高校までは養護学校へ通学。現在は、訪問介護事業所でパンフレット作成、介護スタッフのシフト管理、障がい当事者へのアドバイスなど、様々な仕事を在宅で行っている。並行してインフルエンサーとしての活動もするようにもなった。
きっかけは、自分で物事を考えられるのに体が動かないというだけで『判断能力がない』と思われたことだ。なぜ、勝手なイメージをされてしまうのか。障がい者とふれあう機会がないからでは?どうすればハンデがある人の理解をしてもらえるのか。まなとさんは考えた。
「例えば100万円稼いだ障がいを持った人がいたら多分イメージが変わると思うんです。ハンデがあってもなくても100万円稼げるってすごいこと。100万円が欲しいからじゃなくて、稼げたという努力の証ですよね。それを世に発信することで、何かいい影響が出るんじゃないかなと。そこが僕が一番大事にしているところです」ハンデがある体でも活躍できる将来を真剣に考えていた学生時代。
「将来は社長になりたいと言っていたんですけど、この体では無理だと言われて。だからこそ、絶対になるんだって決めました」体が不自由だから無理だと決めつけられたくない。夢を叶える姿を見せて、その偏見をなくしたい。病気が進行して体が動かなくなる不安は常にある。しかし、たとえ体が動かなくても視線入力装置でパソコン操作さえできれば生きている限り仕事ができる。元々ポジティブな性格であるが、まなとさんの想いは熱い。
自分にはできないこともあるが、できないことを夢見たり目標にしても仕方がないと気持ちを切り替え、できることに力を注ごうと決めた。
その中で影響を受けたユーチューバーがいる。どうしても彼に会いたいとの強い想いで動画の感想を送り続けた。彼は大人気ユーチューバー、ヒカルということもあり返事はない。それでも、まなとさんはメッセージを送り続けた。すると奇跡的に返事があり、なんと憧れのユーチューバーの動画出演が実現したのだ。一日も欠かさず約300日続けた結果だった。容易なことではない。
「僕は、逆境の状態なんですよ。背水の陣ではないですけど、非常に重たいハンデがあり、いつ動けなくなるかもわからない。だから時間を無駄にしたくないし、やれる時にやりたいという思いが人以上にあって継続できたのかと。あとは常に自分はできると信じることにしています」
人気ユーチューバーの動画に出演したことをきっかけに、様々な企業から依頼されるようになった。SNSの専門的な知識や技術、手法や情報を伝えしたり、自分の生き方や福祉の制度で困っていることなど講演会で伝えていきたい。人のために役立つための第一歩を踏み出せた動画出演だったと語る。
そして、今こうして活動できているのは、支えてくれるすべての方のおかげだと言う。
「僕winーwinの関係が好きなので。今だったら家族にやってもらってばかりなんで、いつか家族を海外旅行に招待したい」と彼らしい言葉での親孝行への決意だった。
最後に読者へのメッセージをもらった。
「本当に小さなことでも、どんなことでもいい。『このゲームやりたいけど、どうしよう。やってみよう』とかでも。積み重ねが人生の中で経験になったり、自信になったりします。失敗も経験。経験はお金では買えないものなので、ぜひチャレンジしてみてほしいです」
インタビューの時点でも情報解禁がまだの案件がたくさんあるらしく、これからのまなとさんの活躍が楽しみだ。
「SNS活動では強い自分もネガティブなところも隠さず発信し、僕を知ってもらいたいです。いろいろ面白いことやっていこうかなと計画しています! ぜひ、応援してくれたらありがたいです」

インタビュー 佐々木美紅

アトリエ「あおぞら」 伊吹不二子さんにインタビュー

名古屋市緑区にある、アトリエ「あおぞら」は、以前本誌でも取材をしたおもやいマルシェの開催場所や、ZUCCHINI(チャレンジド達が絵を描き、それを身近な商品にして販売したり絵を展示したりする団体)の活動拠点などになっている。
今回は、ZUCCHINIのメンバーでもある青空(そら)さんのお母様で、アトリエ「あおぞら」のオーナー、伊吹不二子さんにお話を伺った。

■アトリエ「あおぞら」立ち上げの経緯
もともと服飾関係の仕事をしていた伊吹さん。アトリエ「あおぞら」がある場所は、以前はブティックだったそうだ。「洋服の店を10年ぐらいしていました。20年ぐらい前に一番末っ子の青空(そら)が産まれてからは16年ぐらいコインランドリーをしていましたが、その後はしばらく店を閉めていました」
四人姉弟の末っ子として産まれた青空(そら)さんはダウン症で、幼いころは合併症から入退院を繰り返していた。
それからしばらく店舗には何もない状態が続いていたが、伊吹さんの友人で、おもやいマルシェの発起人である斉藤たかえさんから、「マルシェをやりたい」と声がかかり、さらに同時期に、別の友人からも機織りのワークショップをやりたいと言われ、2022年の4月から活動がスタートする。
「2023年1月、活動していくにあたり名前を付けようということで考えたとき、どの活動も青空(そら)を通じて広がったものなので、アトリエ「あおぞら」と名付けました。おかげさまでこの1年、マルシェやワークショップを通じていろいろなかたとの出会いがあり、貴重な経験をさせていただきました」と伊吹さんは語る。

■機織り機とさまざまな作品が並ぶアトリエ
アトリエ「あおぞら」には、2台の機織り機とその作品、ZUCCHINIの商品、福祉事業所の石鹸やアクセサリーなどが並ぶ。アトリエの奥では、伊吹さんがミシンで作業をしていることもある。現在は、アトリエ前の駐車場スペースで年に約3回のおもやいマルシェの開催、週に2回の機織りワークショップや週に1回の手芸サークル、そのほかに、伊吹さんが個人的に洋服のリメイクをしたり、ZUCCHINIの作品展のための打ち合わせをしたり、作品作りなどをする場所になっている。

■趣味も交えて広がる交流の場
「みんなが楽しく無理なく、時にはエネルギッシュに楽しめることを基本に、障害があってもなくても誰もが気にせず一緒に過ごせたり、理解し合えたりする空間の提供ができればいいな」と伊吹さん。実際に、アトリエではそれぞれのペースに合わせて作品づくりが行われたり、ちょっと寄ってお茶する感覚で世間話をしたりする場所にもなっているようだ。その飾らないアトリエの雰囲気が訪れる人たちの心を開かせて、悩みを吐き出してみたり、相談してみたりできる場所となっているのだろう。

■青空(そら)さんを通して広がっていった出会い
伊吹さんに機織りのワークショップを始めたいと声をかけた友人も、おもやいマルシェの斉藤さんも、お子さん同士を通しての繋がりがあったそうだ。

青空(そら)さんは、四人姉弟の末っ子として生まれ、今年で22歳になる。お名前である「青空」の漢字は、伊吹さんと、青空(そら)さんのお姉さんが相談して決めた。「どんな漢字にするかを相談して、『どうせなら晴れている空のほうがいいよね』ということで付けました」
明るい性格の青空(そら)さんは、歌やダンスが大好き。そして何より人のことが大好きでよく気が付き、小さい子のお世話が好きな優しい性格だ。
「和太鼓やピアノ、ダンスを習っていて、アピール力があるので発表会が大好きです。造形教室にも通っていて、自分の作品が展示されるとすごく喜びます。最近はだいぶ落ち着いてきちゃって、シャイになったのかかっこつけているようなところもありますが(笑)」
そんな伊吹さんも、障がいのことに関わるようになったのは青空(そら)さんが産まれてからのことだった。
「青空(そら)が産まれるまでは、障がい者のことは何もわからないままだったんですけど、産まれてから初めてこういう世界を見させてもらいました。お子様が障がいを持っているお母さん達がすごく元気で。私も助けられたこともあります」

青空(そら)さんが成長してだいぶ落ち着き、伊吹さん自身にも余裕が出てきたという今、アトリエ「あおぞら」が、障がいを持つ小さな子供を育てているお母さん達との交流の場になったらいいな、と伊吹さんは言う。
「私は『こうしたい、ああしたい』はあまりなくて、みなさんの手助けをする感じで、ゆるく長く続けていけたらいいなと思います」
                                                                                                                     アトリエ「あおぞら」は、青空(そら)さんをきっかけに繋がった出会いによって、障がいがあってもなくてもみんなが気軽に楽しめる場所となっている。
次回のおもやいマルシェは3月10日(日)開催予定。お近くのかたは足を運んでみてはいかがだろうか。

インタビュー 小林景子